2023/05/01 00:00
天から授かった緑の繭
天蚕は、日本古来の野生の蚕、野蚕の一種で、信州・安曇野地方では、親しみをこめて「山蚕(やまこ)」と呼ばれてきました。
白い繭をつくる家蚕とはちがい、山蚕は、鮮やかな緑色の繭をつくるのが特徴です。
青い空の下、クヌギの林のなかでやまこは育ち、太陽の光を沢山浴びて繭は緑に色づきます。
その繭からひかれる緑の絹糸の艶やかな輝きは、この上ない美しさ。人々の心を惹きつける神々しい輝きは、「糸のダイヤモンド」と呼ばれるほどです。

消えゆくやまこ
やまこを育て糸をとってきた歴史は古く、江戸時代からその文化は引き継がれてきました。
はじまりは、村人が山に入り、繭を見つけて自然採集したのでしょう。そこから次第に卵を孵化させ、やまこの飼育が始まったといわれています。
明治から昭和の初めの最盛期には、有明山の麓一帯の広い地域で飼育されていましたが、今では飼育農家もわずかに残るだけ。収繭量も、減少する一方です。
飼育や製糸にも特別な技術が必要なため、やまこの糸はいまや大変に稀少で高価なものになっています。
これまで一般にはあまり知られてこなかったやまこの美しさを、より多くの方に広めたい。
そして、古来からのこのやまこの文化を大切に残し後世に伝えたい、それが私たちの願いです。
